_MoneyProについての連載は前回までで12回を数えます。一般に、家計簿ソフトについては、何が出来て何が出来ないかを解説している記事がどういうわけか少なく、MoneyProは特にそうだったので必然的に分量が増えました。今回の補遺と総評で連載を一応締めたいと思います。
1.取引データの複数カテゴリー分割記帳機能は使ってもあまり意味が無い
_MoneyProは、一つの取引で複数のカテゴリーに跨がるような収入・支出取引を入力できる機能があります。例えば、あるスーパーでの2,000円の買い物について、
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食費/食料品 1,200円
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食費/酒 300円
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日用品 500円
_と分割して入力できるわけです↓。
_しかし、そのようなデータをエクスポートすると↓のようにしかデータが入っておらず、なんとも泣ける事態になってしまうのです。
_そのため、MFFマクロではカテゴリー欄に入っている先頭のカテゴリーのみを残して変換するようにしています(↑のデータの場合は"食費/食料品"のみとなる)。この機能を使わないようにお勧めした理由がここにあります。
2.MoneyProはデータの重複取り込みを回避できる
_MoneyProのステキ機能です。重複したデータの取り込みを回避することができます↓。何をもって重複と判定しているか、までは調べていませんが…_この機能は、アカウントアグリゲーションのようにデータが順不同で日々増えていくような家計簿サービスからデータを持ってくる場合には大変有効ですね。
3.お世辞にも高速とは言えません
_連載の最後に申し上げて恐縮ですが…_MoneyProは実はいろいろな場面で「かなり待たされる」ソフトです。筆者は2006年度からの30,000行弱の家計簿データをインポートしております。そんなに大した物量ではないと思いますが…MoneyProはこれぐらいのデータ量でも、起動時やグラフの描画の場面で待たされるほか、特に「新規口座の追加」が分単位の待ち時間を要するようになります(タスクマネージャでその間の状況を見てみると、CPUパワーもメモリも他のPC家計簿ソフトを圧倒する占有量になります)。
_ユーザーインタフェースが重いのではなく、何かデータを弄ると待たされる、という感じです。筆者のメインマシンはそこそこ足が速いビジネス用大型ノートなので、サブノートクラスではかなり苦しいのではないでしょうか。
_見たところ、設定している口座数が待ち時間に大きな影響を与えているようですので、カネの動きの少ない複数の口座を1口座に集約してインポートするなど、口座数を減らす努力が必要かもしれません。
4.総評
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ポンニチ人の家計管理には余計な機能が多すぎですね。もっとも、海外原産でそこそこ歴史の長いソフトですし、家計簿ソフトの機能を廃止するのは非常に厄介なコトですので、今後もこの機能ラインナップで行くのでしょう。
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グラフ機能:時間スケールを任意設定できるため時系列を追うには他の家計簿ソフトを凌駕します。色遣いも良し。
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インポート機能:データ入力のメインと位置付けられており高機能ですが、それゆえにウザいUIになっているところがあります。
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エクスポート機能:明らかにデータを端折っています。一生懸命入力したデータの一部が持ち出せない、というのは何とも残念です。
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奇妙な動作がいくつか見られます。
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支出額と収入額が異なる「振り込み」取引が入力できる
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「その他資産」・「その他負債」取引でバランスシートが狂うような取引が入力できる
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残高調整による増減額がエクスポートしたデータに含まれない
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口座を非表示にする機能が、削除しようとしたときに初めて出現する
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この連載の中で発見したバグ
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トランザクションを入力しても残高計算などに反映されないことがある
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カテゴリーを指定した収入取引が含まれているCSVファイルのインポートが不可能
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口座の開始残高を入力してもデータとして反映されない
_まあ、このようなところになりますけども、それでも筆者が一つの家計簿アプリに対して13回もの集中連載を行ったのは…使っていて面白い、と思えたからです。また、現代風のUIも一見して一覧性が足りないな…と感じましたが、実はそんなに不便でもなく、現時点と最近の金の動きを把握するにはかえって見やすいのです。何せ、他のPC家計簿ソフトって、現状を手早く認識するには「どこを見ればいいのか」が判りにくいものばかりですからね…。
_そういうわけで、MoneyProは↑で述べたような難点が改良されればかなり使える、と考えております。皆様も是非お試しありたく。1,750円は買い切りのスマホ用家計簿アプリに比べると決して安くありませんが。