2022/06/20

クレジットカードを鉄道等の自動改札機にタッチして運賃を直接決済する「オープンループ乗車システム」について

_ネット上の記事で大変興味深いものを見つけました。オープンループ乗車システムはSuicaの地位を塗り替えるのか? という鈴木淳也氏の記事です。

_オープンループとは、既存のクレジットカード等の決済システムを利用して別の決済システムを構築するもので、この場合は鉄道等の公共交通機関の運賃を決済する仕組みを構築するものを差します。その対語となるのがクローズドループであり、チャージから運賃引落しまでの全ての資金の動きを1つのシステム内で完結するものを差します。Suicaがその代表例です。

_で、鉄道の自動改札機やバスの運賃収受機にクレジットカードをタッチして、直接的に運賃を決済する「オープンループ乗車システム」について述べているのが前述の記事というわけです。詳細についてはそちらをご覧いただくとして、筆者が興味があるのが「クレジットカードで運賃を決済した場合、履歴にはどれだけ詳細な情報が残るのか?」という点です。

_Suica(およびモバイルSuica)の大きな欠点として、電子マネーとして買い物をした場合に、利用履歴に店舗名が残らず、全て「物販」となってしまう「物販の嵐」問題が挙げられます。しかし、ストアードフェアシステムとして利用した場合は「入 ○○○○ 出 ◇◇◇◇」のように入場した駅と出場した駅の名前がしっかり残るので、後でその日の行動を遡行するのに大変便利なのです。モバイルSuicaをサポートしたアカウントアグリゲーションサービスを利用すれば、そのまま家計簿データとして取り込むこともできますからね。

_ただ、オープンループ乗車システムが普及するとなると…

  1. 鉄道会社等からクレジットカード会社に入場駅・出場駅の情報は渡されるのか?
  2. クレジットカード会社に入場駅・出場駅の情報が渡るとしたら…クレジットカード会社はその情報をマーケティングに利用するのか?

_この2点が厄介事になりそうです。

_1.については、鉄道会社(等)とクレジットカード会社の個人情報に関する縄張り争いに過ぎませんが、この争いにクレジットカード会社側が勝利したら…? クレジットカード会社は個人情報・決済情報(しかもかなり高額な範囲まで)を分析・活用する高度なノウハウを有しているところに、普段の公共交通機関の利用状況という非常に濃い情報を得ることになるわけです。こうなると、他の決済サービス(QRコード決済など)のライバルどころではない、強大過ぎる存在になるのではないかと思われるのです。

_我が国では、SuicaをはじめとするFelicaベースの電子マネーが、(改札通過時の処理速度の関係から)当分の間は一定のシェアを維持し続けるでしょうが、電子マネーのシステムを維持するコストの大きさに耐えかねる動きもあります(例えば、広島電鉄は電子マネーからQRコードでの運賃決済に切り換えるそうです)。それと似た理由で、(すでに資金回収の仕組みを確立している)クレジットカード決済に乗り換える事業体も出てきそうです。たとえカード会社に手数料を払うとしても…

_そうなったときに、当Blogの主題である家計管理にはどういう影響が出てくるでしょうか。上記の1.と2.が共にTrueとなったとき、クレジットカードの明細に入場駅・出場駅を含んだ情報が含まれるようになるのか…? 筆者の関心は、世間とはちょっと違った方角に向きます。こちらの動向も横目で睨んでおきたいものです。

2022/06/19

マスターマネーにもう一つカテゴリーのひな形がありました

_WindowsPC用家計簿ソフト「マスターマネー」の初期設定のカテゴリー構成を紹介している記事に欠落があったことが発覚しましたのでフォローします。実は、個人事業主向けのカテゴリー構成をご紹介していませんでした…

_当時のアホな筆者が「家計簿用途ではない」と判断して記載しなかったものと思われますが、家計簿ソフトの紹介記事としては不完全なままでした。お詫び申し上げます。

2022/06/18

らくな家計簿のデータインポート機能の動作が変わった

_スマートフォンを機種変更した際にアプリの再インストールが発生したため、久しぶりに「らくな家計簿」を触る機会がありました。設定画面の右上に表示されているバージョンは4.6.18です。どうやら4.6に更新された際に、重要な仕様変更があったようです。

_以前の 2020/11/30 他の家計簿アプリのデータをらくな家計簿向けに変換してインポートする の記事では、

出力されたTSVファイルをメール等の手段でスマートフォンに送り、 ファイル操作アプリ等を使用して"/MoneyManager/import"フォルダに持ち込みます。

_と手順を示しておりましたが、TSVファイル(↓の画面例の中では「Excelファイル」と呼んでいるもの)の格納先が"/Download"フォルダに変更されたのです(↓の③画面)。また、このフォルダでなくても、「らくな家計簿」側から格納先を指定できるようになりました(↓の④画面)。ちなみに②・④画面に表示されている"らくな家計簿import 全口座.txt"は、MFFマクロで「らくな家計簿」向けに出力したTSVファイルを"/Download"フォルダに格納したものです。

らくな家計簿のインポートの動作が微妙に変わった

_”/Download"は、例えばメールアプリで添付ファイルを保存するような場合に標準で使用されるフォルダです。上記の変更により、ファイル操作アプリという初心者には敷居の高いモノを使うステップが無くなりました。地味ですが大変喜ばしい重要な改良と言えます。

2022/06/07

結局Money in Excelは頓挫したらしい…2023年6月にサービスを停止

_Microsoft、Excel向け財務データ管理機能「Money in Excel」を2023年6月30日で提供終了 という記事を目にしました。アカウントアグリゲーションサービスで取得した金融機関の残高情報・明細情報をExcelに直接取り込むという機能です。サービスクローズは一年先のことですが、これはMicrosoftらしいユーザーへの配慮という奴なのでしょう(先のリンク先の記事の本文には2022年6月30日となっているところもありますが、英文記事を読んでいると2023年6月30日が正解のようです)

_当Blogでも 2020/06/20 Money in Excelがじわじわと襲来中…しかし未だに謎は多い のように横目で睨んではおりました。しかし、結局米国のみの提供であり、我が国ではサービス展開はされないままでした。何だったんだ… 既存のサービスが飽和している市場に打って出ても、Excelと連携できる程度の機能では割り込めなかった、というところでしょうか。

2022/06/04

WindowsPC家計簿ソフト「がまぐち君」にV5.50が出現

_WindowsPC向け家計簿ソフト(シェアウェア)「がまぐち君」に新バージョン5.50が出現しました(2022/05/07)。「試作品」という位置づけですが、従来のV5.45に比して大きく改良されています。主なところを挙げると

  1. 高解像度モニタ対応
  2. クレジット調整画面のリニューアル
  3. (Windowsの仕様変更に起因し)費目・口座設定の起動に長時間を要していたのを修正
_特に3番目は待たされる時間が半端でなかった(数分以上かかった)ので嬉しい改善です。

_また、当Blogの主題である家計簿データの変換に影響を与えかねない重大な仕様変更がありました。がまぐち君は、データ項目の名称変更と、使用/不使用の切り換えが可能という希有な機能を実装しているのですが、V5.50では、設定変更が可能なデータ項目が増えたのです。

_↓は以前のバージョンの費目・口座の設定ダイアログですが、「支出」の画面において、【数量】と【備考】の2つのデータ項目の使用/不使用を切り換えられるようになっていました。

がまぐち君の以前の設定ダイアログ

_ところが、今回のV5.50では(支出画面において)【数量】・【店名】・【出金元】・【備考】・【使用者】・【税率】・【税扱】の7項目が使用/不使用を切り換えられるようになりました↓。

がまぐち君Ver5.50の設定画面(支出)

_これはユーザーにとって自由度が高まる良き改良…と一見思えるのですが、がまぐち君は 2020/08/11 がまぐち君からエクスポートしたデータを他の家計簿アプリ向けに変換する で述べておりますように「画面表示の状態をそのまま再現する形でデータをExcelファイルやCSVファイルとして出力する」機能を実装しているため、データ項目の使用/不使用を切り換えると、出力したデータ列の並び方が変わってしまう…という大変困った事態になるのです。

_そのため、当Blogでは、がまぐち君のエクスポート機能で出力したデータ(=全項目が含まれている)のみをMFFマクロでのデータ変換の対象としています。

_しかし…がまぐち君の前述の機能は、実は大変魅力的なのです。そこで、エクスポート以外の機能で出力したデータもMFF形式に変換できるようにしようか…と思っていたところ、V5.50の出現で逆により難しくなってしまいました。

_がまぐち君は、掲示板を拝見している限りでは)けっこう古いバージョンを使っているユーザーが少なくない、という点も気になるところです。ユーザー各位に最新バージョンのインストールと、MFFマクロで参照するデータ欄は使用必須、参照しないデータ欄は不使用必須、という具合に設定変更を強いるしかないのでしょうか…どうしよ。

2022/06/01

さらばMoneyLookよ…大変お世話になりました

_2022/02/21 MoneyLookが無料サービスを終了 でお知らせしましたとおり、昨日2022/05/31をもってMoneyLookの無料版のサービスが終了しました(公式案内)。では、「有料版」はどうなったのか…?と言いますと、どうやら一般消費者向けには提供されないままのようです。

_これまでMoneyLookによって取得してきた明細データは、2022/06/30まではCSVファイルとして取り出すことができます。そのデータをMFF形式に変換する機能は、2022/03/03 MoneyLookから出力したCSVファイルの明細データを家計簿アプリ向けに変換する方法 にてMFFマクロに実装済です。データの移行はお早めに。

_MoneyLookは2002年にサービスを開始した、この分野の草分け的存在です。Zaimが2011年、マネーフォワードが2012年のカットオーバーですから相当先行していたわけです。ただし、当初のMoneyLookは専用のPCソフトを使用するものでした。金融機関へのログイン情報は、ユーザーのPC内に暗号化して保存され、他人に握られることは無いため安全性が高い…という触れ込みだったのです。もちろん、当時は金融機関とのAPI接続なんて仕組みは無く、MoneyLookが金融機関サイトに勝手にアクセスして、スクリーンスクレイピングによって残高や明細データを得ていたので、今から思えば大して安全でもなかったわけですがね。

_その後、いつのことか失念してしまいましたが、専用PCソフトでのサービスから、Internet Explorer用のアドインモジュールとしてログイン情報マネージャーをインストールする形に移行しました。しかし、この方式は「金融機関へのログイン情報をユーザーのPC側に保存し、サーバー側には保存しない」というMoneyLookの理念を守ってはいたものの、ユーザーにとっての利便性はイマイチで…後発のZaimやマネーフォワードが「クラウド側に金融機関へのログイン情報を保持する」という仕組みであってもユーザーの支持を得た(もちろん、これを危険視する人はまだまだおいでですが)のと対照的に、MoneyLookはマイナーなサービスに転落して行ったのでした。

_2020年5月31日に、「新MoneyLook」として、銀行サイトとのAPI接続をサポートしたクラウドサービスが開始されました。しかし、この期に及んでも「Moneylook口座情報管理ツール」というブラウザプラグインで金融機関へのログイン情報を管理するという仕組みは残され、すでにクラウドサービスとして確固たる地位を築いていたZaim・マネーフォワードMEとの格差をどうにかするには遅すぎたようです。

_ちなみに、筆者は2020/06/24 我が友マスターマネーはPC家計簿ソフトの基本であります で述べましたように、2011年にMicrosoft Moneyが「MSNマネー残高照会サービス」というアカウントアグリゲーションサービス(AAS)を停止したのを機に、その代替策を探す過程で家計簿アプリ間のデータ変換の研究を開始しております。その際にAASとして採用したのがMoneyLookでして、当時は↓のようなデータ変換の仕組みを構築しておりました。ML2CSVというExcel用VBAマクロが、こんにちのMFFマクロの先祖ともいうべきものです。

2011年当時の家計簿間データ変換のチャート

_↑のチャートの中で、「gooワンビリング」・「Ultrasoft MoneyLink」は、すでに使えないものになってしまいました(「Felica2Money」は一時サイトが消えていましたが復活したようです)。そして、MoneyLookも過去帳入りの存在となります。家計簿アプリ/サービスは継続的に提供されるべきもの、と申し上げてきたものの、現実にはこのように入れ替わりが極めて激しい世界なのです。

_MFFマクロのMoneyLook関係の機能はいずれは削除する予定であり、動作の概念図のチャートからもMoneyLookは消え去ります。寂しい限りですが、一時は筆者の家計管理の生命線ともなったサービス(最期まで無料でした)に敬意を表して今回の記事を締めたいと思います。さらばMoneyLookよ…大変お世話になりました。

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家計簿アプリとデータをやりとりする際のファイル形式のまとめ

_今回の主題は…家計簿アプリとデータをやりとりするときに使用するファイルの形式について、です。筆者がこれまで MFFマクロ に対応させてきた家計簿アプリは27種類(Money通帳とあっと家計簿は別カウント)。まず、家計簿アプリからエクスポートする方向では↓のようになります。...

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