2020/06/02

誰も教えてくれない「かけーぼ」での家計管理法(後篇)

_前回に続くAndroid/iOS向け家計簿アプリ「かけーぼ」のレビュー後篇は、電子マネーの解説から始めます。


6.電子マネーとチャージの取扱い

_「かけ~ぼ」における電子マネーは「現金またはクレジットカードからのチャージでしか金額を増やせない特殊な口座」として取り扱われます。また、クレジットカードと同様に、利用額はカレンダー画面に薄い赤文字で表示され、チャージした日にチャージ額が支出として赤文字で表示されます。

_例えば、ある電子マネーAに、2020年1月31日にクレジットカードAから10,000円をチャージしたとします↓。

電子マネーAに、2020年1月31日にクレジットカードAから10,000円をチャージ

_1月31日にチャージした10,000円が支出として計上されます。ただし、これも薄赤文字で表示される参考額の扱いです↓。なぜなら、このチャージは前述した「登録タイプ=請求日に登録」としたクレジットカードAから行ったためです。

1月31日にチャージした10,000円が支出として計上されます

_その後、2月5日に1,000円、2月10日に500円、2月15日に1,000円を使ったとしたら…電子マネーAからの2月分の支出に合計2,500円が計上されるのが普通の家計簿の動作というものでしょう。ところが「かけ~ぼ」はそうではなく、この2,500円分はカレンダー上に薄赤文字で表示され、2月の支出額には含まれないのです↓(月間合計欄の支出が0になっている)

2月5日に1,000円、2月10日に500円、2月15日に1,000円を使ったとしたら

_ところで、1月31日にチャージした10,000円はどうなるのかというと…クレジットカードAは、先に「締日=毎月15日、支払日=毎月4日」と設定してありましたので、2月15日に支払額が確定し、銀行口座から引き落とされるのは3月4日ということになります↓。

1月31日にチャージした10,000円は銀行口座から引き落とされるのは3月4日

_つまり、2月に電子マネーで支出した2,500円分は2月の支出とはならず、1月31日にクレジットカードでチャージした10,000円が銀行口座引き落とし日である3月4日に支出として計上される…という何とも判りにくい話になるのです。我が国の会計基準が、支出に関しては発生主義を採用していることを考えると、これは相当に違和感のある動作でしょう。ただし、このあたりは「かけ~ぼ」も考慮していて、グラフ表示にだけは、電子マネーやクレジットカードの利用額が反映されます↓。

グラフ表示にだけは、電子マネーやクレジットカードの利用額が反映される

_ところで、「JRE POINTが貯まったのでモバイルSuicaにチャージする」という具合に、電子マネーに「収入」が発生する場合がありますが、残念ながら「かけ~ぼ」ではそのままの形で記帳はできません。一旦、帳簿に現金として収入があったものとして、同日にその帳簿の現金から電子マネーにチャージした、と記帳するしかないでしょう。

_なお、「かけ~ぼ」では個別の口座のある時点の残高を管理するという用途には向いていませんが、電子マネーについては↓の画面の赤枠の欄を見れば現時点での残高が把握できます。

電子マネーについては現時点での残高が把握できる

7.「帳簿間送金」の取り扱い

_「かけ〜ぼ」は、「帳簿間送金」という名称で振替取引を一応サポートしています。しかしこれも、ある帳簿1から帳簿4へ現金20,000円を移動した、という具合にしか記帳できず、帳簿1に含まれている銀行口座Aから帳簿4に含まれている銀行口座Fへ20,000円を振り込んだ、という記帳はできません。「かけ〜ぼ」における帳簿とは、ずいぶんふわふわした概念であることが判ります。もっとも、月間の収支を管理することのみを目的としているなら、それでもいっこうに構わないわけです。

_例として母から長女へ20,000円を渡した場合の入力例を示します↓(もちろん、この操作の前に帳簿を母に切り換えておく必要があります)

母から長女へ20,000円を渡した場合の入力例

_母の帳簿の3月6日に20,000円の支出、長女の帳簿の同日に20,000円の収入が記帳されました↓。

母の帳簿の3月6日に20,000円の支出、長女の帳簿の同日に20,000円の収入が記帳された

8.誰も教えてくれない「かけ~ぼ」の応用技

_ここまで、「かけ~ぼ」による家計管理について解説してきました。おさらいしますと、

  • 「かけ~ぼ」には「銀行口座」の概念が無い
  • 電子マネー以外の残高管理の概念が無い
  • 電子マネーへの直接の収入や、クレジットカードの銀行口座引き落としを記帳するという考え方も無い

_…「無い」ばっかりが並んでいますが、では「かけ~ぼ」は使い物にならないんでしょうか?_そうであれば何百万DLなんて数になるわけがないですね。つまり、これまで解説した使い方では月間・年間の収支管理しかできませんが、裏返せば、月間・年間の収支管理しかしないならこの使い方で十分、ということなのです。

_しかし、他の家計簿アプリでは、現金財布、銀行口座、電子マネー、クレジットカード、証券口座、ポイント等…およそ全ての資産(および負債)を家計簿上で口座として取り扱っていますよね?で、お小遣いの手渡し、銀行口座の資金の別の口座への振り込み、クレジットカードの引き落とし、電子マネーのチャージ等は全て振替取引(アプリによって使用している用語が違いますが当Blogではこのように呼んでいます)として記帳しています。

_では、そのような使い方は「かけ~ぼ」ではできないのか?というと、結論から言えば十分可能です。それは↓の図のように、およそ全ての口座を全て「帳簿」にしてしまう、というやり方です。

_「かけ~ぼ」は、集計画面において、複数の帳簿を合算して収支計算やグラフ表示ができる、ということはすでに述べました。そこで、常に全ての帳簿の合算額を集計するように設定しておけばよいのです。もちろん、この方法では「支払い方法」の機能(クレジットカードや電子マネー)は一切使いません(使うと混乱するのでやめておいた方が良いでしょう)

およそ全ての口座を全て「帳簿」にしてしまう

_それぞれの帳簿の開始残高は、例によって、家計管理上支障のない十分大昔の日付において「当該の帳簿に、その時点における残高と同額の収入があった」という体で記帳すれば設定できます。「かけ~ぼ」には無い残高調整機能も、「使途不明金」という費目を設定して計算上の残高と実際の残高の差額を記帳すれば同等のことが可能です。

_ただし、複数の帳簿を合算できるのはあくまで「集計画面」だけで、ホーム画面(カレンダー画面)では残念ながら単一の帳簿の収入・支出額しか表示させることはできず、表示対象の帳簿をいちいち切り換えねばなりません。この点はぜひ開発元に改善を求めたいところです。


_その他にも「かけ~ぼ」には各種の機能がありますが…当Blogが目指す「他の家計簿アプリとのデータ変換」のためにはこのあたりまで理解できれば十分かと思います。

次回は、「かけ~ぼ」からのデータのエクスポートについて触れます→

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