2020/05/28

順番が前後しましたがLINE家計簿をレビューします

_前回、緊急性が高いことからLINE家計簿の銀行API連携の件を先に述べました。今回は、逆順にはなりますが、登録ユーザー500万超ということであからさまな人気取りとして「LINE家計簿」のレビューをお届けします。ただし、当Blogの記事でございますから、単なるアプリの紹介(そんな記事はいくらでもある)ではなく、あくまで家計簿としてどーよ、というところのみに注目します。データをCSVファイルとして出力する、といった機能は無いので、あまり深くは掘り下げないつもりです。


1.LINE家計簿の基礎事項

  • 「LINEアプリ」または「LINE家計簿アプリ」からアクセスします。基本的には後者がメインです。
  • 無料版のみですが、広告は表示されません。
  • レシート撮影・認識機能、予算管理機能、アカウントアグリゲーション機能を備えています。
  • データを外部にエクスポートする機能は、2020年5月時点では有りません。
  • 振替取引をサポートしていません。よって、例えばクレジットカードから電子マネーのチャージは、クレジットカードからの支出と、電子マネーへの収入の二つの取引として記帳することになります。
  • 取引データを収支計算から除外する機能はあります。振替取引が扱えないならこの機能は必須でしょう。
  • 複数の現金財布を管理可能です。設定画面には「手元にある金額を入力する」欄があり↓、これがいわゆる残高調整機能となっていますが、動作が複雑なので使わない方がよろしいでしょう(ちゃんと使途不明金として記帳すべきです)。どうやら、Zaimのように目に見えない残高調整用のデータを生成する方式で実装されているようです。
LINE家計簿の財布の残高調整

2.LINE家計簿のデータ入力UI

  • いまどきのデザインなのですが、とにかく文字が小さく色も薄いです。特に、金融機関ログイン用のパスワードを入力するのがつらいですね。カテゴリを示すアイコンも小さくて見にくい…。
  • カテゴリーの指定は非常に楽です。大カテゴリを叩くとすぐ下に小カテゴリの選択肢が現われる↓。その場で小カテゴリの追加等も可能です。さすがにLINE、UIはよく考えられていますが、アイコンとカテゴリ表記が薄くて見にくいのは何とかしましょう。
  • メモ欄を入力後、【保存】ボタンを押すためにいちいちキーボードを消す操作が必要なのは非常に面倒です。こういうボタンは画面上部に配置すべきでしょう。他の家計簿アプリにも言えることですがね。
LINE家計簿の入力画面

3.LINE家計簿のカテゴリ構成はマネーフォワードに類似

  • 大カテゴリと小カテゴリの二階層構成です。小カテゴリを使わないようにも設定できます。
  • なんかどっかで見たことがあるなあ…と思っていたら、マネーフォワードMEの費目構成に似ています。
  • 大カテゴリは表示順の変更と非表示化のみが可能です。小カテゴリはそれに加えて追加と名称変更も可能。このあたりの考え方もマネーフォワードMEに類似しています。
  • 特徴としては、それぞれの大カテゴリについて小カテゴリに「その他」が無いことが挙げられます。小カテゴリを無指定とすることで代用する、という考え方らしいです。
  • これだけ揃っているのに、雑費や手数料といったカテゴリが見当たらない…
LINE家計簿のカテゴリ構成

4.アカウントアグリゲーション機能

(1)共通事項

  • LINE家計簿のWebスクレイピングは非常に高速です。連携の設定を入力した直後に残高が表示され、明細も取り込まれています。マネーフォワードMEやZaimなら数分は待たされるところで、高速性に優れるMoneytreeもこうはいきません。ただし、取り込みに時間がかかる金融機関もあるにはあります。
  • Google Playのレビューでは、金融機関側のサイトの構成変更についていけていないという書き込みが見られます。筆者が試した金融機関の中には確かに不具合と思われる動作がありました。
  • 改正銀行法に基づき、銀行とはAPI連携の個別契約締結を進めていますが、6/1に間に合わず連携を切る銀行も発生するそうです。
  • 連携している口座の名称を変更する機能があります。同一金融機関の複数の口座を連携することも可能です。しかし、後で名称変更をしようとすると、その際に改めてパスワードを入力しなければなりません。これは強烈に不満。
  • 取り込んだ取引データは、内容欄をユーザーが弄ることはできません。こんなところまでマネーフォワードMEと同じ設計思想にしています(ここは本当はマネしちゃいけないところです)
  • 「普段と異なるアクセス元からのアクセスに対して二要素認証を要求する」というタイプの金融機関サイトに弱く、必ず二要素認証が求められます。

(2)銀行口座・証券会社(LINE家計簿では「資産運用」)

  • 連携を設定する際、他のアカウントアグリゲーションサービスでは聞いてこないことも聞いてくるのが気になります。例えばたいていの銀行サイトでは口座番号はログインに必要無いのに、LINE家計簿では入力必須となっています。やたらに個人情報を集めたがっている印象があります。これが無料なのに広告を表示していない理由らしいですね。
  • 銀行口座は普通預金口座以外の外貨預金や定期預金等は取り込みません。

(3)電子マネーとの連携

  • モバイルSuicaと連携させましたが、ユーザーが取引データを編集できないので「物販の嵐」問題は解決できません。メモ欄に、 "品名@店名※備考" のように全ての情報を入力するしかなさそうです。
LINE家計簿でモバイルSuicaとデータ連携

(4)クレジットカードの連携

  • 一つの金融機関で複数枚のクレジットカードを持っている場合、どのカードでの決済であるかは区別されません。
  • データ取込後、口座引落しの金額・支払日の表示が遅延する現象があります。
  • ポイントは取り込まれません。

5.総評

  • アカウントアグリゲーションサービスとしては優秀だと思います。金融機関サイトへのログインに不必要なはずの情報を要求しているのは少々挙動不審ですがね…。LINE家計簿は他の家計簿アプリと異なり、SNSと直結したサービスであって、ユーザーは自分のよりハイレベルなプロフィールを運営側にグリップされていることを銘記しなければならないでしょう。
  • とにかく画面が見にくいのを何とかしてほしい。あまりにもあっさりしすぎていて、使っていて快適さを感じる場面がほとんどありません。家計簿アプリは頻繁に触らせてなんぼなのですから…。
  • ところどころにマネーフォワードMEに似た実装が見受けられ、それでいて、マネーフォワードMEの無料版(連携可能な金融サービスが10個までとなっている)を凌駕するサービスが提供されています。
  • データをエクスポートする機能が実装されていないのがどうしようもなく弱いです。家計簿はアプリ内にデータを蓄積するだけでは意味がないのに…2018年11月のリリースからまだ2年経っていないので、今後の機能追加に期待しましょう。

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