2020/09/06

再びDr.Walletと向き合う

_当Blogの家計簿アプリ別の解説も「Dr.Wallet」にたどり着きました。これから数回の連載で取り上げてまいります。

1.Dr.Walletとは何者か

_ご存じのとおり、Dr.Wallet(公式サイトはこちら)はユーザーが撮影したレシートの画像を元に、オペレータがその内容を入力して、ユーザーのアプリに対してデータとして送り返す、というサービスを特長とする家計簿アプリです。マネーフォワードやZaimのスマホ版には、撮影したレシートを文字データとして自動認識する機能がありますが、ユーザーはしばしば「認識不良の修正」や「クソ真面目に入力された余計な文字情報の削除」といった操作を強いられます。その点、人力によるデータ入力精度の高さは、家計簿をつけるという作業の苦痛軽減策として有効と言えます。

Dr.Walletで初めてレシートを撮影したときの画面

_しかし、サービスとしてのDr.Walletのこれまでの経緯は、筆者の見たところ、決して順風満帆とは言えません。筆者が把握している範囲でお浚いしておきましょう。

  • 2013年サービス開始 当所は無料でレシートの全項目の入力代行を提供し、アプリに広告を表示するというビジネスモデルだった
  • 2015年11月 大手銀行7行を対象にアカウントアグリゲーションサービスを提供。以後、連携対象を拡大していくが…スクリーンスクレイピングに拠るため、データ取得上の不具合が頻発。
  • 2016年7月 無料でのレシート全項目入力代行というサービスが限界に達し、
    無料サービス…レシートの日付・店舗名・総額の入力代行
    有料サービス…レシートの全項目の入力代行
    という形で有料サービスを導入。ただし、この処置はユーザーに事後通告されたため非難を浴びた。このころは有料サービスでもCSVファイルの出力機能は未実装(後に実装された)。
  • 2020年4月 銀行法改正を受け、銀行口座との連携機能を廃止。電子マネーやクレジットカード等の連携機能は継続提供するも、安定はしていない。

_…こんな感じで、元学生ベンチャーらしく、挑戦してはみるが商売の拡大に自らが耐えきれなくなって縮小し、ちょうどよいバランス点を模索している、という状態でしょうか。

2.Dr.Walletの難点

(1)Web版の完成度の低さ

_Web版の難点としては以下のような点が挙げられます。

  • 大量のデータ(筆者の場合は2014年度以降の約14,000件)をアップロードしていると、集計画面を表示させようとしてもタイムアウトになる
  • 口座の残高推移が全く間違った金額でグラフ化される
    →運営側に2018年9月に指摘したが返答は「アプリを使え」だった
  • カテゴリ・口座共に、Web版で設定した表示順序が反映されない

_…というわけで、とにかく放置プレイぶりが酷く、現状のWeb版は、データのアップロード/ダウンロードと、口座連携の設定以外に用途がありません。アプリ版との併用が必須となります。

(2)あまり過去のデータは受け入れられない

  • Dr.Walletはどれぐらい昔のデータを入力できるのかテストしました。2006~2008年度の3年間のデータ(約5300レコード)を全口座・全取引アップロードし、Web版の集計画面を表示しようとすると、タイムアウトではなく500エラーを返すようになりました。
  • アプリ版の「過去の分析」機能では、年単位だと2014年1月、月単位だと2016年5月以前、三ヶ月・六ヶ月単位だと2014年7月以前は表示できません。Dr.Walletは2013年にサービスを開始しているんだけどなあ…
  • 2014年度以降のデータ約13000件をアップロードし、2014/03/31付の残高を設定するダミー取引をアプリ版で入力すると、現時点での残高を正しく認識させることはできました。

(3)ときどき設定が崩れる

_Dr.Walletは、月単位での集計の開始日がデフォルトで30日となっており、これを1日に変更してもどういうわけか30日に戻ってしまうことが頻発します。年単位での集計開始月はデフォルトで1月、これを4月に変更しても同様のことが起きます(しかもこの2つの設定画面は、アプリ版では別のところにある!)

_このように、Dr.Walletは残念なところがまだまだあるわけですが、("Zaim"および"オンライン家計簿うきうき"と共に)アップロード機能を備えた数少ないオンライン家計簿サービスであるため、筆者はデータの受入先としては期待しております。スマホアプリの出来はかなり良いのですから。

_では、基本事項を調べてみましょう。

3.Dr.Walletの口座種別

_特にありません。現金、銀行口座、電子マネー、クレジットカード…何であっても、Dr.Wallet上の処理上の取り扱いは同じです。初期設定では、「現金」「銀行」「カード」「その他」の4つの口座が存在し、「現金」のみ、名称変更も削除もできません(つまり「何の口座も存在していない」という状況はあり得ない)。口座を追加する際は、以下の2種類から選択します。

  • 手動管理口座
    • 名称、初期残高、クレジットカードであるか無いか、を設定するのみ。
    • クレジットカードとして設定すると、この口座への収入は基本的には「銀行」からの振替収入として記帳される。
  • 自動口座連携
    アカウントアグリゲーションの対象として、以下の種類から選択する。前述のとおり、銀行は無い。
    • ポイント
    • 投信
    • カード
    • 証券
    • 電子マネー
    • レンタル
    • FX
    • 通販

_なお、「現金」以外の口座は、名前の変更と残高設定と表示順序の変更が可能です。

4.Dr.Walletの取引種別

_Dr.Walletの取引種別は以下の3種類。他の家計簿アプリは振替取引の入力に対するハードルが高いものが多いですが(例えばマイクロソフトマネーや、Money通帳・あっと家計簿がそうでした)、Dr.Walletは簡単に振替取引を入力できます。ここは優れているところとして挙げられましょう。

  • 収入
  • 支出
  • 振替/引き落とし

5.Dr.Walletのカテゴリ(費目)の初期設定

_Dr.Walletのカテゴリは一階層のみです。有料プランの場合、ユーザーから送信されたレシートに対し、一つ一つの買い物についてオペレータがカテゴリを設定していくわけですから、カテゴリが階層化されていると業務が煩雑になるのでこれは妥当なところでしょう。

_では、カテゴリ構成はどうであるか…と言えば、そんなにおかしなところはありません。突っ込みどころは↓の表に入れました。

Dr.Walletの初期状態のカテゴリ構成

_なお、カテゴリのカスタマイズは、アプリ版で以下の操作ができます。

  • 追加
  • 非表示化
  • 順序変更
  • アイコン・色の変更
  • 名前変更(ユーザーが追加したもののみ)
  • 削除(同上)

_カスタマイズ機能は、Dr.Walletのサービス開始時点には無く、後に追加されたようです。ところが、公式サイトのFAQでは未だに「カスタマイズはできない」ことになっております。2年前に指摘したままだ…相変わらずDr.Walletはこういったところが弱いですなあ。


次回はDr.Walletスマホアプリの入力UIを取り上げます→

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