2021/01/02

2021年始時点におけるオンライン家計簿アプリ/サービスの口座連携機能の状況

_今回は2021年の家計簿アプリ業界の展望らしきものをエラソーに語ってみたいと思います。

1.2020年には何が起きたか

_2018年に施行された改正銀行法により、それまで銀行と何の契約関係も無いままアカウントアグリゲーションサービス(AAS)を提供していたオンライン家計簿サービス各社(PFM事業者)は、銀行との個別契約に基づきAPI連携により残高・明細情報を取得することが義務づけられました。その期限は2020年5月末であったものが、新型コロナウィルスの影響により2020年9月末まで延長されましたが、各PFM事業者はそれまでに何らかの対応を迫られたわけです。

_その影響と思われるものとして、

  • 2020年3月末でKakeibon(運営:NTT Communications)がサービスを終了
  • 2020年4月末でDr.Wallet(運営:BearTail X)が銀行との連携機能提供を終了
  • 2020年11月末でLINE家計簿が一部銀行と信金・JA・JFを除く大半の金融機関との連携機能提供を終了

_…という具合に、脱落あるいは縮退する動きが見られました。

2.アカウントアグリゲーションサービスの現況

_2020年12月末現在、各PFM事業者が提供している口座連携機能(AAS)の状況をまとめると以下のようになります。筆者が把握していない情報があることはご容赦ありたく。

_各社の金融機関の対応状況を、これらの資料と、筆者の独断と偏見で図式化すると↓のようになります。表中の色が濃いほど熱心に対応していることを表しています。

アカウントアグリゲーションサービスを提供している家計簿アプリ/家計簿サービス

_事業用ではない一般消費者向け家計簿アプリにAASを提供しているのは、2020年末時点で↑の7種類、というのが筆者の認識です。これ以外にもありましたらぜひご教示下さい。

3.今後の展望、あるいは筆者の希望

_2019年までの家計簿アプリは

  • 無料サービス+広告表示
  • 有料サービス

_でAASを提供していたわけですが、銀行との連携機能がAPI接続(有償)化されたことで、前者のビジネスモデルでAASを維持するのは困難になってきたと言えそうです。

_また、API接続化により、(スクレイピングに求められていた)銀行サイトの仕様変更に追随していく情報収集力と開発力は必要無くなり、AAS間の能力差は縮小しました。今後は、未だスクレイピングのまま残っている、銀行以外のサイトとの接続維持と対象拡大で競争することになるでしょう。

_そうなると…MoneyLookは銀行・クレジット・電子マネーに対象を絞ったことで一般消費者向けとしての戦闘力は大きく下がるのではないかと危惧されます。Dr.Walletも、2020/12/11の記事で述べたようにレシーピ!との統合による競争力強化が期待されますが、レシート入力・レシート認識に特化するのか、それとも銀行以外のサイトとの連携機能を強化する(というかデータ取得の確実性を他のAASの水準に追いつかせるのが先決ですが)のか、どのように方針を定めるのかが重要になるでしょう。

_そして、LINE家計簿はどうするのか?…銀行だけ連携できても家計管理にはほとんど役に立たないので、2021年4月以降に開設するとされている いわゆるLINE銀行(みずほ銀行との提携による)やLINE Payと強固に連携して、LINE経済圏にユーザーを取り込むための家計簿アプリに特化するのでしょう。【追記】その後、LINEはLINE Pay・LINEポイント以外の連携機能の撤廃を3月31日をもって撤廃しました。

_ところで、いち消費者として業界全体に求めたいのが…家計管理に必要な、残高や明細履歴(買い物履歴)といった情報について、銀行以外の各社が共通的なAPI接続の仕組みを構築することです。スクレイピングでは、セキュリティ確保、PFM事業者の開発リソース、ネットやサーバーへの負荷等、あらゆる点で問題がありすぎます。2021年はこの動きが出てくることに大いに期待したいところです。

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