0.加盟店からカード会社への売上票伝送遅延は家計管理の最大の敵
_クレジットカードは、通常は利用した日の当日から数日の内に利用履歴データ(売上票)が加盟店からカード会社へ伝送されるため、アカウントアグリゲーションサービス(AAS)で当該のクレジットカードを連携させておけば、利用履歴がそのまま家計簿の取引データとしてすぐに反映されて家計管理には大変便利です。…といいますか、AASの最大の目的はその利便性を提供することにあるのですから当然ですね。
_ところが、稀に加盟店からカード会社への売上票の伝送が遅延して、買い物の取引履歴が数ヶ月経過してクレジットカードサイトに計上されることがあります(特に海外での買い物で発生するようです)。例えば、5月分のクレジットカードの利用履歴データは、6月初旬の時点でもオンライン家計簿のAASに全て取り込まれているとは限らないのです。
_しかし、それでも、データの分析や保存のために(例えば)「オンライン家計簿の前月の取引データを毎月10日ごろにPC家計簿にインポートする」という運用をしたいユーザーはおいででしょう。そのために当Blogは存在するわけですが、今回は、ある読者の方のリクエストにお応えして、オンライン家計簿アプリとしてZaim、PC家計簿ソフトを我が友マスターマネーを例に、「データ変換のタイミングと方法」をどのようにすればよいか、という点を考えたいと思います。
1.前月の利用履歴を毎月インポートする運用
_前述のように、Zaimに取り込まれた「前月のクレジットカードの利用履歴データ」を、毎月のあるタイミング(例えば第二日曜日)でマスターマネーにインポートする、といった運用を図式化すると↓のようになります。
_この運用の欠点は、↑の図のように、8月になって5月の利用履歴データがZaimに取り込まれても、すでにマスターマネーにインポートする(2020/06/27「マスターマネーに、他の家計簿ソフトから変換したデータをインポートする」参照)機会は過ぎており、Zaimとマスターマネーのデータに乖離が発生する、ということです。
_乖離を回避するためにはどうすればよいでしょうか? ZaimはWeb版の「最近の入力」欄、アプリ版の「新着の履歴」画面で、AASで新規に取り込まれた取引データを把握できる機能がありますので、PC家計簿にインポート済であるはずの日付の取引データが取り込まれた場合は、個別にPC家計簿に手入力するかインポートすればよいわけです。
_ただ、コンピュータを使っているのに、人間様がZaimの新着情報を確認し判断しなければならない、というのは少々アホらしい話ではありますね。
2.三ヶ月前までの利用履歴を毎月インポートする運用
_この運用例は↓、Zaimに取り込まれた「三ヶ月前までのクレジットカードの利用履歴データ」を、毎月マスターマネーにインポートする、というものです。例えば、Zaimの5・6・7月のデータを8月にマスターマネーにインポートすれば、8月に5月の利用履歴がZaimに取り込まれても、(タイミングさえ合えば)インポートするデータにその利用履歴は含まれます。
_ただし…9月になって5月の利用履歴がZaimに取り込まれたとすると、そのデータをマスターマネーに取り込む機会は来ません(9月には6・7・8月のデータをインポートするから)。また、8月に5・6・7月のデータをインポートする際、7月には4・5・6月のデータをインポート済ですから、5・6月のデータは重複することになります。これをいちいち人間様がチェックして取り込みから除外したりするのも大変で、かつバカバカしいでしょう。
_ちなみに、マスターマネーは、CSVファイルではなくOFXファイルをインポートする機能もあり、これを使えば重複したデータのインポートを避けることができます(MFFマクロのOFXファイル出力機能についてはこちらを参照)。その代わり、費目の情報はOFXファイルのデータに含まれないので、インポートのたびに費目を指定する手間を要します。
3.前々四半期の利用履歴を四半期ごとにインポートする運用
- 1.の運用では…インポートの取りこぼしが怖い
- 2.の運用でも…インポートの取りこぼしは完全回避できず、重複を排除するのも手間だ
_となれば、↓のように、7月に1~3月、10月に4~6月…という具合に、かなり時間をおいてからZaimのデータをマスターマネーにインポートするという方法があります。Zaimには2020/07/08「Zaimからダウンロードしたデータを他の家計簿アプリ向けに変換する」で述べたように、データを取り込む期間を指定する機能があるのでこのようなことができるのですが…この運用にはマスターマネーでのデータ分析が可能になる時期が相応に遅くなるという大きな欠点があります。加盟店からクレジットカード会社への売上票データ送信が半年以上遅くなるケース(滅多に無いとは思いますが)にも対応できません。
4.データ重複も取りこぼしも無い運用はこれしかない
_究極の方法としては…アカウントアグリゲーションサービスを使わずに、クレジットカードのサイトから直接に確定版の利用履歴データをダウンロードしてマスターマネーに取り込む、という運用があります。タイミングとしてはクレジットカードの毎月の締め日の直後ですね。
_実は、筆者はこの方法を採っています。家計簿アプリの研究者としては身も蓋もありませんが…いろいろな家計簿アプリの動作を確認するためには「ほぼ間違っていない」と確証を持てる基礎データが必要だからです。
_この運用法は、いちいちクレジットカードのサイトに手動ログインしてデータ(CSVファイル)をダウンロードしなければならず、個々のクレジットカード会社のデータをマスターマネー向けに変換する方法も別途確立しなければなりません(未公開ながら、3つのクレジットカードについては、DLしたCSVファイルのデータをMFF形式に変換するマクロも作ってあります)。
_AASなぞ信用できぬ!(API連携ならまだしも、スクレイピング連携ならなおさら)という方にはこの運用しかありませんが、かなりの手間を要します。この手の作業を苦にしないユーザーでなければ難しいでしょう。
5.結局、かつてのマイクロソフトマネーに勝るものはない
_2020/07/26「2020年でもまだマイクロソフトマネーを使い続ける理由」で述べたように、かつてのマイクロソフトマネーはMSN残高照会サービスというAASと連携して、取引データをPC家計簿ソフトに直接取り込むことができました。これが家計管理上の最強の運用形態だったのに、マイクロソフトがこの分野から撤退してしまったのは大変惜しいことです。
_マネーフォワードMEやZaim等のAAS付オンライン家計簿サービスは、どうしてもデータの分析や保存の面で弱いところがあり、筆者としてはPC家計簿との併用をお奨めするため当Blogを執筆しております。今回はその目的に対しては少々痛いことを書いておりますが、家計管理上の重要事項として取り上げました。ユーザー各位の参考にしていただければ幸いです。